いらっしゃいませ

いらっしゃいませ!

 

当店はオープンカーと磨きコーティングの専門店です。

幌の張替えから開閉機構の修理まで、なんでも対応。

ぜひお気軽にご相談くださいませ。

 

ただいま仕事が立て込んでおりまして、

メール返信、電話応答が出来ない場合があります。

ご迷惑をおかけいたしますが何卒ご了承ください。

★店長日記★

故障診断

はい、こんばんは。

本当に、全然幌が入ってこないんですよ、困ったものです。

というわけで、電動オープンの修理が続いております。

 

まずは、インフィニティ・G37コンバーチブルです。

 

G37は日本で言うところのスカイラインなので、

スカイライン・コンバーチブルとも言える存在です。

インフィニティということで、どちらかというとラグジュアリー志向な車ですが、

こちらは大変珍しいMT仕様です。

まぁ、G37自体が非常に珍しいですけどね。

 

症状としては、電動オープンが全く動かない、という状態です。

スイッチを操作しても一切何の反応もありません。

動かないだけでなく、ビープ音もしないし、

インフォメーションディスプレイにエラー表示も出てきません。

 

次に、診断機を接続してみましょう。

が、こちらの車両の場合、ルーフコントロールモジュールと全く通信ができません。

この場合、コンピュータが完全に壊れているか、配線が外れている、

あるいはそもそもコンピュータに通電していない、といったことが考えられます。

 

続いて、ヒューズボックスを確認します。

しかし、ヒューズは切れていないし、きちんと電圧もかかっておりました。

こうなってくると、少々めんどくさそうな雰囲気が漂ってまいります。

コンピュータが死んでいるかどうかは交換してみないとわかりませんし、

断線も配線を一本ずつ追っていかないと分かりません。

費用的にも時間的にも、それらはなるべく避けたいところ。

なるべく単純であって欲しい。

まぁとりあえず、コンピュータを直接観察してみましょう。

 

パーツリストから調べていくと、どうもコンピュータは左後ろのトリムの裏にあるようです。

リヤシートを全て外さないといけないので少々めんどくさいです。

で、トリムをめくって見てみると、なにやら配線が無駄にごちゃごちゃしております。

はい、この時点で何となくピンときました。

 

純正ハーネスと純正コンピュータの間に、このようなものがくっついておりました。

これは何かと申しますと、本来、完全停車時にしか操作できない電動オープンを、

走行中にも開閉できるようにする、という社外品の装置です。

 

電動オープンのの動作条件として、ほとんどの車両では、

 

「車速信号が0である」

「パーキングブレーキがONである」

 

という条件が設定されているのですが、

この装置は走行中であっても、

 

「車速信号は0」

「パーキングブレーキON」

 

というダミーの信号を送ることによって、

走行中の開閉を可能にする、というシロモノなのです。

 

で、この装置が付いていることによって、なぜ開閉できなかったのかと言うと、

コネクタ部に何やら緑青のようなサビが見受けられます。

 

分解してみると、

はい、思いっきり錆びてました。

コネクタ以外のチップ類は特に錆はありませんでしたが、

この錆が原因で回路がショートして、完全にぶっ壊れてしまったのでしょう。

試しにこの装置を外してみたところ、何の問題もなく動作いたしました。

割と単純な問題で良かったです。

 

ちなみに純正のECUやコントロールモジュールだと、

最初から防水対策も徹底されておりまして、

絶対濡れないような場所についていたり、

濡れても大丈夫なように樹脂で密封されていたり、

さすが純正!と言えるレベルの処置が施してあるのです。

 

たとえばこちらのZ4用のコントロールモジュールを見てみてください。

取付場所も水が入りにくい場所にありますし、

入ってきたとしてもしっかりカバーで覆われていて内部には浸水しません。

また、コネクタが下向きに付いていて、さらに水密性の高いコネクタ形状になっております。

 

さらにさらに内部を見てみると、

基盤全体が茶色の樹脂で丸ごとコーティングされており、

万が一浸水してもショートしないように配慮がなされております。

これが純正クオリティ!

でもまぁ、これ、壊れてたので交換したんですけどね!笑

そもそもZ4は排水口の中に電動ポンプをぶち込むという暴挙を犯しておりますので、

こだわるのそこじゃないだろ!と思うところではあります。 

 

まぁ社外品の装置も、

「水に濡れる場所に設置しないでください」

と注意書きはあるのでしょうけどね、

そのような注意書きは往々にしてスルーされますし、

水というのは思いもよらぬところから侵入してきたりするのです。

ちなみに今回はパワーウィンドウのすぐ下に設置してありましたので、

そのあたりから侵入した水でサビが発生したようです。

 

 

続きまして、アウディ・TTロードスター(8J型)の修理です。

こちらも全く動きませんが、コンピュータとの通信は出来ました。

エラーコードを見てみると、

本来有り得ないはずの信号が出ているよ、というメッセージが三つ出ております。

このうち、左右のフラップセンダーと言うのはTTロードスターでは最もメジャーな症状です。

 

原因は、左右のフラップを駆動するこのモーターです。

モーター内部には、フラップのポジションを検出するためのポテンショメータが付いているのですが、

このポテンショメータが本来有り得ないおかしな信号を発することで、

コンピュータがフラップの位置を検出できなくなってしまい動作を停止してしまう、という状態です。

ちなみにこれ、ベントレーにも全く同じ部品が使われております。

 

 

カバーを開けてみると中はこんな感じです。

 

更にバラしてみると、

はい、この黒いリング状の部分がポテンショメータの抵抗体です。

このように円形の抵抗体で回転角度を検出する場合、「ロータリーポテンショメータ」と呼ばれます。

 

ちょっと見えにくいですが、ギア側には金属のブラシが3本ついておりまして、こちらは「ワイパー」といいます。

ギアの回転に合わせてこのワイパーと抵抗体の位置関係が変わる=抵抗値が変わる、ことによって、

回転角度を検出する、とった仕組みになっているわけですね。

 

で、見ていただくと分かる通り、抵抗体にもワイパーにも、ガッツリとグリスが付着しておりますね。

実はこれ、ギア側の潤滑に用いられているグリスなのです。

それがはみ出して抵抗体に付着してしまうことで不具合が発生する、

というのがインターネット上において主流な見解になっておりまして、

アウディジャパンとしても、これが原因だ!ということで、

リコールとはいかないまでも、サービスキャンペーンによる交換を行っておりました。

ネット上でも、このグリスをふき取ってしまえばいいよ!という記事をよく見かけます。

 

ところがですね、私、新品で取り寄せたモーターを何回か分解してみたことがあるのですが、

新品でも最初からガッツリとグリスが付着しているのですよ。

そもそも、ギアの山とワイパーの位置が近すぎて、どうやっても絶対に付着してしまう構造なのです。

というかむしろ、わざと付着させている、という雰囲気すら感じられます。

明らかに、抵抗体全周にわたってべっとりと塗ってありましたから。

作っているのは純正採用されるレベルの専門メーカーですからね、

付着に気付かないはずがないし、付着して問題があるなら放置するはずがない、

少なくとも素人にあーでもないこーでもないと議論される程度の技術レベルではないはずなのです。

 

というわけで、私としては今のところ、グリスの付着そのものが動作不良の原因ではない、と考えております。

ポテンショメータの接点用のグリスが売っているくらい、ポテンショメータでのグリス付着は普通のことなのです。

むしろスムーズな動きと確実な伝達を支えているくらいかもしれません。

じゃあ何が原因なの?と言われると、残念ながらよく分かりません!

そこまでの知識がありません。

まぁ敢えていうなれば、ワイパー付近のグリスがやや黒ずんでいるのが気になるくらいですかね。

電気が流れることでグリスが変質し、抵抗値が正しく検出されなくなってしまうとか?

で、新品では対策品のグリスに変更されたのではないかと。

 

というわけで、不確かな知識による中途半端な修理はできないので、

現状では新品交換、という対応を行っております。

そこまでバカ高い部品ではないですしね。

とりあえず新品交換しておけば症状は治まりますので。

 

ちなみに、任天堂スイッチのジョイコンドリフト問題もポテンショメータの不具合が原因です。

あちらはX/Y軸それぞれに直線型の抵抗体を使用したリニアポテンショメータが使われているのですが、

摩耗により発生したプラスチック粉などが抵抗体に付着することにより、不具合が発生するようです。

一番最初にジョイスティックを採用したNINTENDO 64の時は、

遮光スリットと赤外線を組み合わせた光学式センサだったのですよ。

昔のボール式マウスの回転検出と同じ仕組みですね。

これはきわめて単純な構造で、あまり細かい分解能は期待できませんが、

非常に高い信頼性を誇り、素人でも分解清掃出来るくらいシンプルな作りでした。

長く使っているとゴリゴリとした感触になってくるので、よく分解してグリスアップしたものです。

 

 

で、大幅に話が逸れましたが、

ここのモーターを左右とも新品交換したところ、

フラップモーター部分からのエラーはなくなり、フロントのロックまでは解除されるようになりました。

 

ところが、フロントロックが解除されても、幌本体が全く動きません。

うんともすんとも言わない、一切何も動きません。

本来はモーターがウィーンと回って、油圧で幌が動くのです。

 

はて、なんでかなーと、ポンプのカバーを外して見てみると、

オーマイガー!

完全に水没して錆びまくっておりました。

 

ご丁寧に、こんなケースの中に入れて保護されているのに、

わずかな隙間から水が入り、完全に水没しておりました。

もちろん、本来はここまで水が侵入してくることはないのですが、

幌左側の排水口が詰まることによってキャビン部およびトランク部に水が流れ込み、

トランク前方にあるこちらのポンプも水没してしまうのですね。

 

で、まぁこうなったら新品交換するしかないわけですが、

困ったことにこちらのポンプ、アッセンブリーでしか供給されておらず、

その価格なんと軽く30万円オーバー!

アウディジャパンが高いのではなく、世界中どこで買っても同じような値段なのです。

ちょっと酷すぎやしませんかねぇ、フェラーリやランボルギーニじゃないんですから。

しかも、油圧を2系統に送るだけの、かなりシンプルなポンプですよ。

ほぼ同じような構造のBMW・Z4のポンプは純正で10万円しないのに。

ん?てかこれ、Z4用のポンプとほとんど同じじゃないか?

そういえばZ4のポンプが一個余ってたよなーと思い、比べてみると、

モーター部分はどう見ても全く一緒です!

 

取付用のネジ穴も、シャフトの形状も全く同じ!

 

というわけで、アウディとBMWの夢のコラボレーションが実現しました。

動作テストの結果、全く問題なく、とても力強く動きました。

なお、モーターの上にくっ付いているポンプ部分はアルミ削り出しで完全密封されているので、

モーター部分からの貰い錆でぱっと見はダメそうでも、内部的には全く問題ありません。

 

なぜこのようなスワッピングが可能なのかと言うと、

答えは簡単、ポンプのメーカーが同じだからです。

そもそも電動オープン用のポンプなんてたいして需要もありませんので、

そう何社もあるわけもなく、各車同じメーカーのポンプを使用していたりするわけですね。

いやあ、よかったよかった、数十万円の修理費を、数万円に抑えることができました。

 

参考までに、意外なところではコペンも同じメーカーのポンプを使っております。

こちらもほとんど同じような見た目をしているでしょう?

ただし、コペンの場合はトランクリッド部も油圧で動きますので、

4系統8本の油圧を発生させるために、横にバルブブロックが追加されておりますね。

バルブブロックにはソレノイドバルブが付いており、

それにより油圧の経路を切り替えている、という感じです。

 

 

はい、これでやっと直ったわーと安心したのもつかの間、

幌本体は最後まで開くものの、サイドのフラップが閉じてくれません。

 

というわけでまた診断機をつないでライブデータを見てみます。

一番上のコンバーチブルトップステータス、

この数字はですね、各部センサーから検出されたデータをもとに、幌の現在の状態を表しております。

ただ、0と1の羅列なので、人間には何が何やらさっぱり分かりません。

 

調べてみたところ、各部の数値はそれぞれこのような内容になっておりました。

その結果、どうも一番左の数値であるF171の項目、

コンバーチブルトップ格納スイッチの数値がおかしいことに気付きました。

幌は空いているのに、いつまでも「閉まっている」というステータスになってしまっているのです。

そうなりますと、コンピュータ側としては、

開けたはずなのに閉まってるだと!?わけわかんねぇ!!

となって、動作を停止してしまうわけですね。

さらに、わけわかんねぇ状態のまま動かすと、

どこかが干渉してバキっとぶっ壊してしまう可能性もありますので、

それ以降コンピュータは操作を一切受け付けなくなってしまうわけです。

開いたきり閉まらない…とても困りますね。

 

さて、そのF171の、幌の格納状態を検出しているセンサーが、こちらです。

ただの四角い小さな部品が付いているだけで、おおよそスイッチには見えません。

こちらはホールセンサー(ホール素子)と言いまして、

金属が近づくとことによる磁界の変化を読み取り、

それにより、骨組みの位置を検出している、というセンサーなのです。

可動部が一切ないためマイクロスイッチのように固着したりはしないものの、

イマイチ検出精度が曖昧(はっきりとしたON/OFFではない)なところがあります。

今回はどうも取り付け部周辺の金属部に反応して誤作動を起こしていたようで、

取付位置を少し調整したところ、正しく動くようになりました。

こんなの目で見ても絶対に分からないし、検電テスターを使っても解明は困難でしょうね。

唯一、診断機をつなぐことでしか原因が分からない。

うーん、本当に難しい。

まぁ、ホールセンサー系のトラブルは何回か経験したので、

とてもいい勉強にはなりましたね。

 

 

 

それでは。